最近、時々思うことがありました。
「シェボーは何が残っていればシェボーなのか」、「シェボーをシェボーたらしめているのは何か」
と。
それを聞いた会社の同僚が答えた一言、
「『CHEVAUX』ってステッカーじゃないですか?」
その言葉を聞いて、何か目の前の霧が晴れたような気がしました。
というわけで、今回はリクエストのありました、カーボンフォークへの交換です。
【フォーク周りの部品】
最初にフォーク周りの部品の説明と、ショボ太のデフォルト部品の紹介をしときます。
自転車のフォーク周りですが、大きく、
- フォーク本体
- ステム
- ヘッドパーツ
で構成されてます。
ヘッドパーツは、フォークのコラム(フォーク中央に突き出たステムと接続される筒)とフレームとの間にかまされる部品で、
フォークをフレームに固定する部品です。
このヘッドパーツ(とそれに対応するフォーク)には大きく
- ノーマルヘッド(スレッドヘッド)
- アヘッド
- インテグラルヘッド
の3種類があります。
最近のスポーツ自転車では、トラック用などの例外を除いて、ほぼアヘッドもしくはインテグラルヘッドとなっています。
ちなみに、初代シェボーはノーマルヘッド、2代目シェボーはアヘッドです。
フォークですが、アヘッドやインテグラルヘッドのフレームが多く出回っている関係上、交換用のフォークもアヘッド用やインテグラルヘッド用のものが多く、ノーマルヘッド用はほとんどありません。
今回交換するフォークもそんな事情からアヘッド用です。当然アヘッド用のフォークはノーマルヘッドに取り付けることはできませんので、
ヘッドパーツもあわせて交換する必要があります。
ヘッドパーツですが、サイズのバリエーションがかなり複雑です。主要なもので
- ノーマルヘッド
- ノーマルサイズ(フォークコラム径1インチ)
- JIS (ワン外径30.0mm/下玉押し内径27.0mm)
- イタリアン(ITA) (ワン外径30.2mm/下玉押し内径26.4mm)
- オーバーサイズ(フォークコラム径1-1/8インチ)
- ノーマルサイズ(フォークコラム径1インチ)
- アヘッド
- ノーマルサイズ(フォークコラム径1インチ)
- JIS (ワン外径30.0mm/下玉押し内径27.0mm)
- イタリアン(ITA) (ワン外径30.2mm/下玉押し内径26.4mm)
- オーバーサイズ(フォークコラム径1-1/8インチ)
- ワンポイントファイブ(フォークコラム径1.5インチ)
- ノーマルサイズ(フォークコラム径1インチ)
- インテグラルヘッド
- 好き勝手作りすぎて意味不明状態
これだけあります。
ちょっとサイズが表す位置が分かりにくいので図解しますと、

- A:ワン外径(= ヘッドチューブ内径)
- B:フォークコラム径
- C:下玉押し内径
です。
アナーキー状態のインテグラルヘッドは置いといて、問題になるのが、ノーマルサイズのヘッドです。
他のやつらはすべてフォークコラムの直径を計れば特定できるのですが、ノーマルサイズのヘッドについては、
フレームのヘッドチューブの内径を実測するか、今ついているヘッドパーツを外して実測するかしないとわかりません。
一般的に、国内製品やママチャリの類はJISで、海外製品はITAらしいです。
初代シェボーのヘッドは、まさにこのノーマルサイズのノーマルヘッドでした。さすがシェボー、期待を裏切りません。
(ちなみに、サスフォークの2代目シェボーはオーバーサイズのアヘッドだそうです。ノーマルヘッドでノーマルサイズのサスフォークとかにしちゃうと、モノがないのでかえって高くなっちゃうからでしょう。)
ショボ太のヘッドがJISなのかITAなのかはあとで測るとして、ヘッドの次はステムです。
今回、アヘッド用フォークに交換しますので、デフォルトのノーマルステムは使えません。
なので、アヘッド用のステムに交換するわけですが、ここでもサイズ類があります。
アヘッド用のステムでは、
- コラム径:フォークコラムの径と合致するもの
- クランプ径:ハンドルバーのクランプ径と合致するもの
- ステム長:ステムの長さ
- ライズ:ステムの角度
が問題になります。下の2つは乗ったときの感覚の問題なのですが、上の2つは適合するものを使用しないと取り付け自体ができません。
今回のショボ太では、新しいフォークのコラム径は1インチ(25.4mm)、ハンドルのクランプ径も25.4mmなのでそういうものを準備する必要があります。
で、クランプ径の方はいいのですがコラム径で問題がありまして、出回っているアヘッド用ステムのコラム径はほとんど1-1/8インチ(28.6mm)のもので、1インチのものはほとんどありません。
この場合、1インチ→1-1/8インチへの変換アダプタ(シム)を別途入手して使用する必要があります。
【交換部品】
と、こんな感じで、フォークの交換はサイズに悩まされましたが、以下のようなラインナップでやってみます。
前提としては以下のとおりです。
- ノーマルサイズのノーマルヘッドをノーマルサイズのアヘッドに交換する
- ノーマルサイズのアヘッド用フォークを使用する
- ステムはオーバーサイズのアヘッド用のステムにシムをかます
■フォーク

フォークはリクエストのありましたカーボンフォークにしてみました。
コラム径は1インチ、下玉押しサイズは26.4mmのイタリアンサイズです。
なお、カーボンとはいっても、いわゆる「アルカーボン」ってやつで、フォークのブレード以外がアルミ製のものです。
フルカーボンのフォークは軽くていいですが、扱いが神経質でいろいろ困った挙句壊しそうなので。
というか、1インチコラムのカーボンフォークは強度の関係からか、どのメーカーもコラムが金属製でした。
ちなみに、クロスバイクのような700cリムにVブレーキの組み合わせのリジッドフォークは「シクロクロス用」で探すと見つかります。
■ヘッドパーツ

ヘッドパーツは1インチのアヘッドのものを選びます。この時点ではJISかITAかわかりませんでしたので、
JISとITAの2種類を買いました。
結果的に2つとも必要でしたが。
1インチJISと1インチITAのどちらもラインナップしているヘッドパーツの種類が少なく、どちらもラインナップしていて予算的に適合するものがコレしかなかったというのが実情です。
■ステム周り

ステムはコラム径が1-1/8インチ、クランプ径が25.4mm、ステム長が90mm、ライズが73°のディズナの製品を選びました。
だいたい74°前後のライズのステムだと、取り付けたときに地面と平行になるらしいので。

先ほど書いたとおり、ステムのコラム径が1-1/8インチ用ですので、1インチ径のフォークにはめるにはシムが必要です。

アヘッドの場合、ノーマルステムのように高さの変更が柔軟ではありません。
スペーサーをステムの上下に噛まして高さを調整するのですが、これはそのためのスペーサーです。
後ほどフォークのコラムを切りフォークを固定するのですが、その際の調整用としてもあると便利です。
なお、1インチ径のコラムには、上記シムの有無にかかわらず、1インチ径のスペーサを使用するそうです。

本来、アヘッドの場合、フォークのコラムの内側に「スターファングルナット」というくさび状のナットを打ち込みます。
打ち込みには専用の工具が必要なことと、打ち込みに失敗すると復旧が超面倒(そもそも外すことを想定していないので)というのがあって、
こちらのパーツを使用することにしました。
コラムに突っ込んでアーレンキで内部のボルトを締めると、コラムの内壁にガッチリ食い込み固定されます。
また、スターファングルナットと違って何度でも脱着が可能で、私のような素人にも優しいつくりになってます。
■工具類
フォークおよびヘッドの交換には専用の工具が多く必要です。そして何気に高価です。今回は以下の専用工具を用意しました。

フレームのヘッドチューブにはまっている、上下のヘッドワンを取り外す専用工具です。
ない場合は、長いマイナスドライバーとプラハンで、内側からコツコツたたいて外すとか、テーパー状の丸太でドツくという方法もあるらしいです。
推奨はしません(笑)

上とは逆に、上下のヘッドワンをヘッドチューブにはめる専用工具です。
Wiggleで購入したもので、3,800円ぐらいでしたが、国内で買うと9,000円とかします。
ない場合は、プラハンで慎重に均等に叩き込むとか、長ボルトとナットと板で自作の工具を作って圧入するとかいう方法があるらしいです。
推奨はしません(笑)
これらとは別にフォークへの下玉押しの圧入用に工具が必要なのですが、
予算の都合上、下玉押しの圧入は近所のリアルあさひで工賃払ってやってもらいました。

スライディングハンマーとやらでガッツンガッツン打ち込んで、事も無げに3分ほどで完了。
何この敗北感(笑)
あと、工具のカテゴリとしては、「ワークスタンド」を用意することをお勧めします。
作業中、前輪がなくなりますので、ディスプレイスタンドでは自立せず非常に作業が面倒です。
今回は後輪にディスプレイスタンドをはめて、車体をさかさまにして作業しました。サドルが地面に当りますので、何か敷いとかないとサドルが痛みます。
【交換作業】
前置きが長くなりましたが、ここから実際の交換作業です。
まず、デフォルトフォークを取り外します。取り外しの方法はこちらを参照ください。
取り外したところで、新旧のフォークを比べてみました。


新フォークの方が下玉押しの位置が少し低く、レイクも小さいです。
より前傾となり、ハンドリングがクイックになるものと思います。
この辺が、元々ついているものとあまりに大きく異なると、ジオメトリが大きく変わるためかえってよくないそうです。
2代目シェボーなんかはフロントサスでフォークが長いので、リジッドフォークに変えたりすると、もしかするとジオメトリが大きく変わっちゃうかもです。
フォークを取り外したら、ヘッドチューブから上下のヘッドワンを取り外します。
なお、アヘッドフォーク→アヘッドフォークへの交換であればヘッドパーツの交換は不要で、下玉押しの移植だけをやればいいとのことです。
今回はノーマルヘッド→アヘッドへの交換ですので、ヘッドパーツの交換は必須です。
取り外すには、まず、上で出てきたヘッドワンリムーバーをヘッドチューブの下から差込みます。
リムーバー下部の、タコさんウインナーの足みたいな部分がヘッドチューブ内でワンに引っかかった状態になったら、
おもむろに上からプラハンでドつきます。

遠慮がちに上品にやってたら外れません。
ガンガンドついてるとそのうちワンが外れます。
上下とも同じように外れたら完了です。
と、ここで最後の身体測定。

外したワンの外径を測ってみると、30mm。つまり、シェボーのヘッドのサイズは1インチJISでした。
さすがシェボー、肝心な所ほどママチャリ寄りです。
JISなのでITAなフォークと合いませんが、調べてみたところ、同じ製品でのJIS版とITA版でベアリングが同じものであれば
ITAの下玉押しとJISの下ワンの組み合わせでもほぼ問題なく使えるそうです。
というわけで、2つ買っていたヘッドパーツのITAの方の下玉押しと、JISの方のワンを組み合わせて使うことになりました。
お次はそのワンをヘッドチューブに圧入します。
最初にヘッドチューブのワンがはまる箇所に薄くグリスを塗っておきます。
そこに、上下のワンを軽くはめます。ワンには上下がありますので間違わないように注意が必要です。あと、お高いヘッドパーツだとマークがあったりしますが、この際に正面に合わせとくらしいです。
そして登場、専用工具ヘッドワンプレス。

上下のワンを銀色の金具ではさむように設置し、下のハンドルをつかんで固定しつつ、
上側の青色のハンドルを閉めこむとヌルヌルとワンがはまっていきます。結構癖になりそうな感覚です。
しまるところまで閉めたら完了です。あまり強く締め付けすぎるとワンが変形します。
海を越えて取り寄せた専用工具ですが出番は1分でした。次使うのはいつのことやら(笑)
サクサクいきましょう。次はコラムカット。
ノーマルヘッドのフォークと違って、アヘッド用フォークはコラムがヘッドチューブを突き抜けます。
突き抜けた部分はそのままにしておくわけではなくて、適当な長さにカットします。
カットする長さは好みで、前傾姿勢が好きなら短め、アップライトな姿勢が好きなら長めにすればよいですが、
それ以前に、「手持ちのステムとスペーサーでフォークがしっかり固定できる長さ」である必要があります。
逆に言えば、自分の好みのステム高にできるようなステムとスペーサを用意する必要があります。
というのも、アヘッドの構成はこんな感じになっています。

ステムの上にあるトップキャップの引き上げボルト(アンカーボルト)が、フォークコラム内に打ち込んであるスターファングルナットにねじ込んであるのですが、
このアンカーボルトを締め込むと、コラムごとフォークが持ち上げられ、上下のワンと上下の玉押し同士が密着し、
フォークが固定されるという仕組みです。
で、ここで重要なのが、図中緑色のスペースで、フォークが十分固定される前にこのスペースがなくなってしまう
(アンカーボルトを締込みきってしまう)と、フォークの固定力が足りず、ガタが生じてしまい危険です。
つまり、
- ヘッドチューブの高さ
- ステムの高さ
- スペーサーの高さ
- ヘッドパーツの高さ(スタックハイト)
を事前に計算して、フォークが完全に固定された状態でも緑色のスペースが生じるように、コラムの長さを決める必要があります。
とはいっても、現物がそこにあるのに計算で求めるのもナンセンスなので、仮組みをしてから切る場所を決めたほうが効率的です。
というわけで、まずは仮組みを行います。
仮組みしたら、コラムをカットする位置を油性ペン等でマークしときます。

仮組みとは言え、フォークが斜めになっていたりすると、本組みのときにコラムが長すぎて上図の緑色のスペースがなくなってしまいますので注意が必要です。
マークする位置は、ステムとスペーサをすべて差し込んだときの上端よりも少し下(かなり重要)です。
上端にあわせてしまうと、上図の緑色のスペースがなくなりますのでフォークを固定できません。
写真を載せといてアレですが、上の写真ではちょっと上すぎでした。
スターファングルナットでなくプレッシャーアンカーを使いましたので、その分の厚さを考慮してませんでした。
私の場合はもう5mmほど下(2つ目のスペーサの真ん中あたり)でないとフォークを固定できませんでした。
位置が決まったら意を決してカットです。
今回は、ハンドルバーのカットで使用したパイプカッターを使用しました。

普通は金鋸で切断するらしいのですが、まっすぐ切断する自信がなかったのでパイプカッターを使用しました。
パイプカッターと使うと、切断面が太くなりステムやアンカーナットが入らなくなることがありますので、
カット後にヤスリで削ってやる必要があります。
なお、コラムが金属製の場合はパイプカッターでも切断できますが、コラムがカーボン製の場合はパイプカッターは厳禁です。割れます。
コラムのカットが終わったら、本組みです。
本来、本組みの前にスターファングルナットの打ち込みを行いますが、今回はプレッシャーアンカーを使用しますので行ってません。
打ち込みには専用工具が必要です。リアルあさひとかでもやってくれるらしいです。ヘッドの交換は何気に打ち込み系の作業が多いです。
本組みする際は忘れずにワンにグリスを盛ります。
盛ったら仮組みと同じ要領で組み立てていきます。
こんな感じです。




※本当はシムの切れ目はこの写真とは反対側(向かって右)です。

で、スターファングルナットの代わりのプレッシャーアンカーです。

下が本体で、上がアンカーボルトです。
本体中央には6mmのアーレンキが差し込めるようになっており、本体をフォークコラムに差し込んで6mmアーレンキで締めこむと、
本体の幅が広がってコラム内壁に食い込み固定されるという仕組みです。
また、本体の中央、6mmアーレンキ用の穴の奥には溝が彫ってあり、アンカーボルトがねじ込めるようになっています。よくできてます。
実際にはめるとこんな感じです。
コラムに差し込んで、6mmアーレンキで締めこむと固定できます。カーボンコラムにも使用できるそうですが、馬鹿力をかけるとコラムの方が割れてしまうらしいです。

この部品、コラム内に落下するのを防ぐツバがあるのがわかりますが、この厚みを考慮してませんでした。
なので、ほとんどステムの上端からスペースがないのがわかります。写真貼っといてアレですが、この後、フォークの固定力が弱かったため
コラムを再度切断して組みなおしてます。なので、実際はアンカーはもうちょっと奥に収まるはずです。
アンカーを設置したらトップキャップをステムの上にかぶせて、アンカーボルトを締めこみます。

アヘッドの場合、ヘッドの玉当り調整はここで行います。アンカーボルトを締めこみすぎるとステアリングが渋くなります。緩すぎるとガタがでて危険です。
また、仮組みの時と同様、コラムが斜めに入ってたりすると締め込みが足らなくなりますので、写真のようにちょっと持ち上げてやるとうまくいきました。
あと注意が必要なのは、この時点ではステムのボルトは固定「しない」という点です。先にステムを固定してしまうと、いくらアンカーボルトを締めてもコラムが持ち上がらずフォークが固定できません。
最後にステムを固定します。

ハンドルがまっすぐなるよう調整した後、側面のボルトを締めこんで固定します。
このステムの固定ですが、ステム自体の固定はもちろんですが、フォークの固定の役割も担っています。
つまり、先ほどのアンカーボルトはあくまで玉当り調整を行うための仮止めでしかなく、実際の固定はステムによって行っているということです。
(極端な話、ステムを固定したら、アンカーボルトは外してしまってもよいらしいです。)
なので、しっかりと固定します。(この辺、金属製コラムだと少々きつく締めても大丈夫ですが、カーボンコラムの場合は締めすぎると割れます。)
あとは、取り外していたブレーキやハンドルバーを取り付けて完了です。
こんな感じになりました。

交換前と比べてみます。

ちょっとホイールベースが短くなって、ステムの位置も低くなりました。
しかし何でしょうか、えも言えない違和感は。。。トップチューブが長いからかな。。。
「シェボーだからさ」と言えばそれまでですが。。
【乗ってみた】
実際に乗ってみました。
安物でもカーボン、デフォルトのハイテン鋼に比べれば細かい振動をかなり吸収してくれます。
最初、タイヤの空気圧が足りないのかと思ったほどです。
逆に、相対的にリアの方が跳ねるような感覚が強くなってます。
ただ、デフォルトに比べるとかなり快適になったのは確かです。
あと、ポジションですが、ステムの位置が低くなったためちょっとステムが遠くなりすぎたかなと感じてます。
そのうちもうちょっとステムを短くするか、スペーサーを追加するかもです。